占星術は科学か、という問題に関連している。
占星術で予測が可能として、では人間の自由意志とはなんだろうか、ということだ。占星術で予測が可能なのは、私自身は星の運行と地球上の 事象との間に因果関係があるのではなく、なんらかの相関が あるだけだろうと思っているとは、 「占星術と科学」ですでに 書いている。
私のこの立脚点をもとに、話を進める。（したがって、私と 全然違う考え方の人がいるのは当然だろうし、みんなに私の 考え方に従ってほしいと思っているのでもない。ただ、私の 考えを理解しておいたもらった方が、この場で展開される 文がわかりやすいと考えるからである。）
人間に自由意志があるかどうかという問題は、何も占星術に 始まらない。古くは神学や哲学においても論じられているし、 現在でも心理学や科学哲学において論じられている。
この問題は、端的にいうと二つの派に分けられる。 自由意志こそが人間の心の温床である。人間は何も ないところから自発的に考えたりするのだから、これは 自由意志があって、それが考えを生み出すと考えなければ 説明できない。 自由意志などなく、人間の様々な認識や心理現象は、 結局のところ物理的な反応の結果である。自由意志とは、 自分が何に統制されているかがわからない状態であり、 心は遺伝的な条件と、過去の全経験と、現在の状態の ３つで決定可能なものである。
どちらが正しいかを、ここで論じるのは無理だ。 前者は魂の存在を認めるくらいの考えであり、後者は 完全な人間＝機械論であるが、どちらが正しいなどは、 まだ結論が出ていないし、当分出そうもない。
ただ１つ、科学的に人間を見ようと思ったら、後者の見方に どんどん近付くことはある。自由意志がもし存在するなら、 それが何であるかは科学的に分析しなければいけないし、 そうなった場合、科学的な決定論を考慮すれば （たとえカオス理論を採り入れても同じこと、結局 決定可能であることを論じているのであるから）、 自由意志はむしろ「人間が自由を感じて行動を決定できる」 ということになるであろう。話がずれた。
むしろ、占星術で扱うべきことは、人間の様々な心理や 行動や状況を星の運行で予測可能であるとするならば、 星の運行と、自由意志の関係はどうなのか、ということだ。
占星術で予測が可能であるとはいっても、それは示唆する にとどまっていて、すべては神の御術にあると考えたのは トマス=アクィナスであるが、それ以降も「星は暗示すれども 強制はせず」といわれる。
でも、これが科学になったらどうなるのか。科学的な 分析手法を導入するならば、人間の行動決定自体も （カオス理論により初期条件の違いが大きな結果の違い を生んだり、量子力学のように確立論でしか決定できない側面があるにせよ） 星の理論で決定可能ということになる。科学が自由意志を 分析すれば、自由意志の規定要素を考えざるを得ない ように、占星科学でも人間の自由意志にあたる部分に 決定可能論を導入することになる。
これは、「人間が自由意志で自分の運を変えることが できる、そのための占星学研究である」という理論とは 食い違う。自由意志というものが星の予測からはずれる ものであるなら、始めから自由意志に任せておいた方がよい ことになる。
もちろん、違うという意見は出るだろう。自由意志に任せて おくと、星の運行の示す通りの悪い影響が出てしまうのだ、 だから、星の運行を知り、知った上で自由意志でそうならない ように気をつけることが肝心だ、と。
そうなった場合、自由意志とは何なのだろう。星の運行に 影響を受ける部分も心にはあるが、本来の自由意志はそのような 影響はないのだろうか。そうなら、自由意志は科学的にも まったく検証不可能なものの１つであると認識することに なってくる。しかし、現実問題として、自由意志について は科学的な心理学から様々なメスが入れられつつあり、 自由意志は検証の対象にあがりつつある。従って、これは矛盾である。
私自身はどう考えているのか。自分や相談にのったケースから 考えてみる。
星の運行の影響は、少なくとも自由意志（←存在するとして）や、 よい星で癖をつけるなどで、簡単に影響を脱出できるほど楽なもの ではない（いや、そう考える人々も決して楽に脱出できると 考えているわけではないと思いますが）。けっこう深刻な影響を 与える場合の方が多く、その際に自由意志と呼ばれるものは 頼りないくらいだ。むしろ、逃れようとして、なんらかの 拍子に暴発すると、手がつけられない勢いで星の影響が 噴出することさえある。
こうなると、「あれほど注意しろといったのに…」といわれても、 相手もどうしようもない。むしろ感情的になってしまったり するから、そういうことをいってもアドバイスにならない。
私はむしろ、小さな範囲で済むように「こういう悪いことが 起きるかもしれない。でも、その程度で済めば恩の字、 むしろその程度で済んでくれた方が、生活基盤が崩れるわけ でもなし」などといったりすることが増えてきた。 悪い象意があれば、身近で深刻な影響の出ない方でちょっとだけ 出してしまっておいて、そっちに気持ちを集中させ、 それ以外に影響が及ばないように 意識を切替えさせる、とでもいうのだろうか。これも、 人によるのだが、暴発よりましなようである。
え、結局自由意志とは何なのかって？そんな人類数千年の大問題、私ごときにわかるはず、ありませんよ。（笑）